2.体操のポイントあれこれ
ここではピントをしぼった体操にするためのポイントや、体操をする上での注意点を紹介します。
効かせる体操にするために 〜探すことと絞ること〜
効果的な体操にするためには、まずどこがコッているのか探し、そこへピントをしぼった刺激を送る必要があります。筋肉は、ソウメンの束のような組織の集まりになっています。同じ筋肉の中でも、コッている組織とそうでない組織があり、それが細かいものであるほど、ただまんぜんと体操しただけでは上手く刺激が伝わらないので、細かく動かしていく必要があります。
そのためにコリを「探すこと」と、コリにピントを「絞ること」がコリとり体操では重要になります。指圧では「診断即治療」という言葉がありますが、似たようなニュアンスですね。
これらを行う時の重要なポイントは、身体を動かしながら自分の感覚を頼りにして、「つっぱった感じ」がするところを探していくということです。どの角度にしても、つっぱった感じがする「つわもの?」の方は、最も強く感じる角度で体操をします。
具体的な方法は、体操法を紹介する中で行っていきますが、ポイントをだけまとめますと下表のようになります。
《 「探す」「絞る」ためのコツ 》
目標になるスジの両サイドを固定する。
スジを伸ばす(あるいは縮める)。
その状態で、スジを伸ばす(縮める)角度を変ながら(前後・上下・左右に倒す
あるいは回す)最もつっぱりを感じるところで止める。
そのまま、伸ばす・縮める・揺さぶる・押えるなどの方法で刺激を加える。 |
治療家が行っているテクニックには、矯正法のように複雑に見えるものもあります。でも実は、このポイントの組み合わせで成り立っているものがほとんどなのです。
体操をして良い時。悪い時。
多くの方は気軽に体操を始めると思いますが、中には何か症状があって体操をして良いのか悪いのか悩む、という方もいらっしゃるでしょう。
痛みが強くて動けないとか、発熱で寝込んでいるとか、常識的に見て分かりやすい場合は迷うこともないでしょう。けれども「症状はあるけど何とか生活できている」という場合、自分は一体どうなのか迷うこともあると思います。心配な時は信頼している専門家に相談すればよいのですが、ここでは自分で見極めるポイントを紹介します。
手順としては、まず、体操をしないほうがよい症状を自分の状態と照らし合わせて、当てはまるかどうか確認します。当てはまらなければ体操を試験的に行い、体の反応を見ながら進めていきます。
《 体操をしないほうがよい症状 》
発熱や炎症、急性の症状がある場合。急性の症状については、下痢などの内科的な症状の場合でも、急性の時は体操をしないで様子をみてください。
動作に関係なくジッとしていても痛みがある場合。特に日を重ねるごとに回復せず、波のように押し寄せては引いていくことを繰り返し、中でも夜間の痛みを強く感じるようなら、まず病院への受診をお勧めします。
首の体操をしている時に、めまいや吐き気を催す場合は中止してください。また、慢性関節リウマチに罹っている方も、首の体操を行う場合は担当の先生に相談して下さい。
首や腰の体操をしている時に、倒した側と同じ側の手足、例えば首を右に倒した時に右腕に痛みが走る、腰を左に倒した時に、左脚にしびれが走るなどした場合は中止して下さい。
年齢を重ねると骨がもろくなるために、骨折が起こりやすくなります。中でも背骨(特に腰)の圧迫骨折は、しりもちをついた時に起こることがよく知られていますが、骨の状態によってはクシャミをした時とか、買い物袋を持ち上げるという些細な動作でも起こってしまいます。
また骨折というと激痛というイメージですが、それにそぐわず鈍い痛みを出すことも珍しくありません。病院で骨粗しょう症と診断されており、最近なんとなく腰の重苦しさがずっと続いているなあという方は、体操をする前に病院に受診し、骨折の心配がないか確認して下さい。
身体を動かす方向には、曲げる・伸ばす・右に倒す・左に倒す・右に回す・左に回すの6方向あり、このうち3方向以上痛みがある時は、関節の運動法(矯正法)の適応になりません。これに従い身体を動かして3方向以上痛みを感じるようなら、痛いところを刺激する体操は控えて下さい。
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以上のことに当てはまらない場合は、以下の見極め方法にしたがって体操を行っていきます。この方法は、マッケンジーテクニック(ニュージーランドで開発された治療法)の考え方に基いています。
《 体操による反応の見極め 》
体操を行っている途中で痛みやしびれが出る、あるいは症状をはっきり感じても、体操を終えると症状がなくなるか、もしくは弱くなる、あるいは出ている範囲が狭くなるなら続けてよい。また、手足に出ている症状が体の中心(背骨の方向)に集まってくることも、良い反応と捉えてよい。
痛みがあったとしても、体操を行っていくうちに動かせる範囲が広がってくるようなら続けてよい。
体操が終わった後、痛みやしびれの範囲が広がってくるようなら中止する(このようなことが起こる時は、マッケンジーテクニックでは痛む方向と反対の方向へ運動するという方法をすすめています)。
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医師が病気の診断をする時にも、まず危ない病気の可能性を消去法でのぞいた後に、これが効きそうだという薬を使って、効果があれば「何々病」という診断がつくという「治療的診断」という方法があります。この方法もそれにならって、まず体操してはいけない状態を除き、後は体操をして実際の体の反応をみながら進めていきます。
コリとり体操は、できるだけリスクを下げながら体操をしていく方法を紹介しています。けれども、全てのリスクは自分だけではなかなかカバーできません。万が一、体操に伴って身体のトラブルが生じても、当院では責任を負うことができませんので、少しでも不安を感じるようなら医師などの専門家と相談しながら行ってください。
自分に合った刺激の加減
ストレッチなど「つっぱり感」を伴う体操を行う場合、よく質問されることが「どのくらいの強さで伸ばせばいいのか?」ということです。
これも自分の感覚を頼りにして決め、「気持ちがいい」とか「痛いけど効きそうな感じがする」といった、プラスの印象を持てる刺激なら大丈夫です。
ストレッチは縮んでコッた組織を伸ばすというものですが、人間の身体は人それぞれ違うので、この程度のコリにはこの位の力で伸ばせばよいという、決まった指標があるわけではありません。
一般的に紹介される考え方は「痛みを感じない程度」といわれることが多いのですが、中には「痛みを感じる位でないと、効いた気がしない」という方もいらっしゃいます。そのような方が「痛みを感じない程度」の体操しかしないと、欲求不満を感じてイライラしてしまい、コリがほぐれるどころか反対に強くなってしまったということも起こることがあります。
反対に、痛みに対して敏感で恐怖感を持ってしまう人が、痛い位の体操をすると、身体が守ろうとして緊張してしまい、これも逆効果になってしまいます。このような方の場合は「痛みを感じない程度」の強さで行ったほうが良いでしょう。
いずれにせよ、最初の見極めを行ったうえで、ご自分の身体と相談しながら、急に大きな力を加えずにゆっくりと動かしていくならまず心配はないでしょう。
ほど良い時間の長さとは?
どの位、同じ体操を続ければよいのかという質問もよく受けます。これも紹介する本や雑誌によってまちまちですが、ストレッチですと最低20秒以上で1分位は続けるとよいといわれています。けれどもおすすめしたいのは、ここでも自分の感覚を頼りにするということです。
まずコッたところにピントを絞った時の感覚を覚えておき、体操をすることではじめの感覚が和らいできたら終わりにします。ストレッチでは、縮んだ組織が伸びた時につっぱり感を感じるのですが、しばらく時間をおくと組織が伸びてくるので、はじめのつっぱり感が和らいでくるのです。ですから時間を決めて伸ばすよりも、感覚の変化を目安にしたほうが自分に合った体操を行っているということになります。
体操は自分が満足するまで続けてよいのですが、無理して完全につっぱり感がなくなるまで行う必要はありません。特に慢性的なコリほど、反復して続けていく必要があるので、始めよりも軽くなった気がするというところで止めて大丈夫です。もちろん、仕事中など忙しい時は適当なところで終わっても結構です。
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1.「コリとり体操」って何? 2.体操のポイント 3.どの体操を行えばよいのか? 4.体操を自分のものにするために
5.体操のポイントチェック 6.≪首・肩≫ 7. ≪ 上腕・前腕 ≫ 8.≪背中・腰・おなか・おしり≫ 9.≪太もも・足≫
10.コリとり体操に込めた願い 「技のコツ」「まみむメモ」メニュー
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